~日本が愛した宝石~

第2章



黒翡翠


インペリアルジェイド?ろうかん?

インペリアルジェイド=コマーシャルジェイドや、ろうかんはどのようなものでしょうか?

インペリアルジェイド=コマーシャルジェイドは、緑の中の緑。光を透かす濃いエメラルドグリーンで、ムラのない宝石クラスのものを指しています。それは同時に、無処理であることを示すのですが、とにかく近年は処理物が多く、それらをインペリアルジェイドとして扱うことがあるため、注意が必要です。


一方、ろうかんとは、もともと『老坑=ろうこう』という言葉からはじまっています。

昔、ある、ブランド鉱山からは最上品質の翡翠が産出していました。しかし、その鉱山のものではない、新しい翡翠が出回ったため、それらと区別するために『老坑=ろうこう』と名づけたのです。

今でも、それらブランド鉱山の原石は流通することがございます。それは川に流れだした古い原石から削りだしたものです。

これはダイヤと同じ原理で、古い原石の塊が、地殻変動で押し出され、川に流れ出たものです。そのため、この原石は丸みを帯び、とても古いことから、これを今でも『老坑=ろうこう』といいます。この原石は、もともとが美しい翡翠を産出するブランド鉱山のものですので、緑が濃く、つやがあります。

しかし、現代において使われる「ろうかん」は琅玕と書きます。これは老坑とは異なり、いわゆる濃い緑で透明感がある翡翠をさしています。この名称は現代ではあいまいになり、色が濃く透明感があれば、ムラがあってもこのように表記されます。また業者によっても、まちまちとなっているようです。


彫刻のすばらしさ

翡翠の世界において、彫刻なしには語れません。彫刻といえば翡翠。翡翠といえば、彫刻です。

しかし、ランクの低い翡翠に、細やかな彫刻はあまり施せません。それは結晶構造が荒いため、細かい模様がつぶれてしまうからです。ですから、結局、良品の翡翠にしか精密な彫刻はできませんので、必然的に高額になってしまうのですが、もはや翡翠の彫刻は、ペンダントだとかそういった名称では片付けられません。

翡翠の彫刻は1枚の絵画のようであり、作品であって、芸術品です。いつまでも残し続けたい、心を豊かにするアートなのです。



翡翠の力

翡翠は古来から、神秘的な力をもつとして、シャーマニズム的な祭事や、権威、富の象徴、魂を沈める石、再生の石、として用いられてきました。

縄文時代には呪的な装身具のひとつとして重要視され、時の権力者たちに求められ続けました。

そして身に着けるものに五徳(仁・慎・勇・正・智)をもたらし、災いや不幸から身をまもるお守りとされていたのです。

また、どこかの地域では、翡翠が病に良いとのことで、翡翠を粉にして飲む習慣があったとのことです。

西太后は大変な翡翠コレクターだったそうですが、彼女の時代から歴代の皇帝に愛され、ダイヤよりも高価で貴重な石として大切にされてきました。




受け継がれる翡翠

翡翠には多くの処理が用いられてきました。それは加熱処理・含浸処理・カラーリングとさまざまです。
そして似ている鉱物が限りなく存在することも混乱させる要因になっています。

彫刻などは磨きの際、ワックスを使用しながら磨きますので、少し残っている場合がありますが、これは含浸とは違いますので問題ございません。

最も問題なのは、カラーリングを施したものです。

一時の流行なら、それらを愛用されるのも良いと思いますが、その価格が本翡翠と同等であったり、人を傷つけてしまうような結果をもたらしてしまうのでは悲しいことです。

翡翠も石ですから、いつか枯渇します。今はまだ採掘されていても、良品のものはそうそう採掘されなくなりました。

例えば良品の氷翡翠も、ある業者では、3年待ってやっと入荷できたそうですが、一瞬で完売したそうで、伺ってみれば、用意できた数は2個だけだったそうです。3年待って2個。そんなものなのです。

それでも買い求めた方はラッキーでした。他のお店さんはそれを見ることすらできなかったのです。

ストーンは本当にタイミングです。昨日あったものが無かったり、5年待ったものが今日入っていたりと、予測不能な世界です。そんな驚くべきタイミングがもたらしたストーンを、ある方が手にされるまでのご縁は、深いものに違いありません。

ふと、私も買い付けながら思うことがあります。ああ。このストーンはあの方が買われるに違いない。すると、本当にその方が買われていかれるのです。そういったことは多々ございます。

当店が出来ることは、お手伝いをすること。ストーンとあなたをつなぐお手伝いをさせていただくことです。そして同時に、皆様に恥をかかせたくないと、心から想っています。

日本人として、代々受け継がれるべきものとして、無処理のジェダイトでなければ、ありえない時代に突入したと、当店はそんな風に考えております。



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