お伊勢さん「トヨウケビメ様」
ご無沙汰をしてしまいまして申し訳ございませんでした。
お便りのほうは順次ご返信をさせて頂いておりますので
どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m
毎日沢山の方から「神々のお話」のリクエストを頂戴しておりまして
本当にありがとうございます。
ご期待にお答えしまして本日は伊勢で出会った神々のお話を
させていただこうと思いますm(__)m
はじめにー。
どこかへ向かう時は当店の式神の狐に、あらかじめ遣いを頼みます。
当店の狐は伏見の狐でございますので、一度伏見に戻りまして
そこから別の遣いが伊勢に向かうことになります。
狐の世界は完全な縦社会で、厳密に役割と位があり、それに沿って動いています。
遣いをだすということは今で例えるなら電話に似ています。
「明日伺いますので、どうぞよろしくお願いします」と
先に連絡をしておけば、相手もそのつもりで待っていてくださるという、そんな具合です。
到着前日になりますと今度は誰かが夢枕に立つのが通例でございまして
それは夢と現実のはざまにあたるのですが、その夢うつつの世界で
何時間も会話をすることになります。
これがなかなか体にこたえまして、
目はつむってはおりますが、一晩中起きていたような感覚でドッと疲れるのでした。
今回夢枕にお立ちになられましたのは、猿田彦神社を守るオオタノミコト様でした。
口ひげを生やし、色白で、鼻がすっとしており、細い目は垂れています。
『一年に一度、この時期しかおりてこないので、お顔を見せてください』
ということで、猿田彦神社にも顔を出すことになりました。
『トヨウケノミコトに逢われよ。
ミケツ神様と同じく食を司る役目の神で、外宮におられる。
トヨウケノヒメの従者(じゅうしゃ)も狐であり、
本来参拝には順序があるが、トヨウケノヒメの社だけで構いません』
「そうですか」
『この度は巫女殿をお連れなさったのですね?
巫女殿は神職を決意していらっしゃらないようですね?』
「アマテラス様に前回言われたのです。
”導きたいものがおるのなら連れてまいれ”と。
それで一緒に来ることにいたしました」
『ご興味はおありのようですが、自分が当事者とは思ってないように思われます。
この旅にて、決意が少し傾いて神職としての自分の本来の姿に立ち戻らせるかと思います。
今回の旅は良きものとなりましょう』
今回は当店のスタッフも同行いたしまして、それがこの旅の目的だったようです。
しばらく話をしたのですが、それは少し憚られる内容でしたので割愛させて頂きたいと思います。
次第に夜があけてゆくと、だるく重たい体を起こしてボーッとしておりました。
この日はちょうど雨が降っておりまして、外宮しか伺えなかったのですが
知り合いの神主さんにガイドをしていただいて
特別室にお招きいただきました。
「今日はあいにくの雨でしたね?
どうぞお茶とお菓子を召し上がってください」
「ご丁寧にありがとうございます」
「ここはトヨウケノオオミカミを祀っているのですが、アマテラスオオミカミの食事をお世話する神様です。
これは伏見のウカノミタマノカミと同じ役割といえます。
私達は毎日365日、常に5人体制で朝の8時と15時にお食事を供えます。
お食事を供える日は前日からここに泊まり、翌日にお世話をするのです。
20年に一度、遷宮※がありまして、その頃はとても忙しくなります」
※20年に一度、伊勢神宮の神木を使い社を建て替える行事
次に建て替えられる場所
「どうして20年に一度なのですか?」
「諸説あるのですが、20年という時間が、人間が最も早く社を建て替えることができる最短の時間だからという説があります」
こんな風に色々なお話を伺いまして、お暇をさせて頂きました。
「さようなら。また伺います」
そうして出口まで見送ってくださったのですが、そう言えばトヨウケビメに逢えなかったと思っておりましたところ声が聞こえてきました。
『出口の手前まで伺おう』
それはのびやかなキレイな声でした。
最後の橋を渡る手前で、すうっと神が降り立ちました。
長い黒髪をオールバックにして、白地に薄朱色の模様が入った羽衣を着た、ややおたふく顔の神様でした。
こちらがその時の似顔絵です。
「これは、わざわざありがとうございます。
ここは少し人が多いようですので、あちらの外の駐車場のほうはいかがでしょうか?」
『この橋から外へは出られませぬ』
「そうでしたか」
「どうしてこの時期におられるのですか?」
『5月に居るのは、新緑の時期で色々な祭り事を人が行い、祝ってくれるからだ。
その時に居ないと可愛そうだからの』
「はい。この度の御用は何でしょうか?」
『今度、伏見に行った時に、ウカノミタマノカミ様によしなに伝えておくれ』
「わかりました。あなた様はなぜここに祀られておられるのですか?」
『我は天女であった。しかし羽衣を盗まれて帰れなくなり、丹羽(兵庫県)のほうにおったがアマテラス様に呼び寄せられた』
「遷宮はどうして20年に一度なのですか?」
『我は預かり知らぬこと。人の都合で神の都合は一切ない』
「そうでしたか。
その胸にある大きな赤い勾玉は何ですか?」
『これは昔の人間が捧げてくれた瑪瑙だ』
「わかりました。
ありがとうございました。」
こうして外宮をあとにいたしました。
短い時間ではありましたが、神主さんともお話できましたし
トヨウケビメ様ともご挨拶ができましたので
この日はこれまでにして、眠ることにしました。
翌日は内宮に行くことになります。
明日はきっと晴れるだろうと思いながら
目をつむりました。
次回は「アマテラス様」のお話です。
続きをどうぞお楽しみに♪