◆紀元前200年ごろから白玉の活躍 |
秦の始皇帝の頃から、白玉はよく用いられるようになりました。 先ほども申し上げましたが、ネフライトの中でも、白いものは、ごくごく稀な希少色で、純白のものは別格に扱われます。 さらに透明度が増し、その色合いが羊の脂のように見える最高のものを、特別に「羊脂玉」と言います。 これこそ、もっとも高貴な色とされ、国中のあらゆる羊脂玉は全て天子に献上されました。 王のあらゆるものが、指輪が、ベルトが、根付が、印が、白玉になったのです。 そしてそんな尊い白玉がぶつかり合う音色は、天子=王の声であるとされました。ホワイトネフライトが奏でる独特の高い音は、細密な結晶によって生まれる音です。 それこそが、王の音であり、王のものでした。 それにともなって白玉の加工技術は盛んになります。それは命を懸けたものでした。 王に召抱えられる技術者はエリートたち。しかし彼らに失敗は許されません。それは死を意味していました。 そのため、彼らの美しい細工は、魂を込めた輝きを放ったのです。 そしてそれはしばし、“美しい凶器”になりました。 ネフライトは非常に精密なため、実はとても丈夫です。そのため、繊細な加工が可能でした。 すると、人を殺める秘密道具としても活躍します。 先を鋭く尖らせた指輪などに毒を塗って使用されるなど、薔薇の棘のように美しく妖しく活躍したのです。 後世になって、やがて、人々が豊かになってくると、庶民の手にも白玉は少しずつ渡るようになります。 しかし、それはひそかに受け継がれました。 白玉はとても価値があるものです。時に、そのもの自体がお金の役割を果たしました。彼らはそれを取り上げられないように、ボタン型にしたりして、そっと袖に隠したのです。 ◆ホワイトネフライトが採れる地 中国の西の方や、台湾、ロシアなどが主な産地になりますが、今の流通は特別なルートを使わない限り、ほとんど無いに等しいくらいです。 それほど白いネフライトは貴重で、無いものなのです。 しかも、それに加えて中国の好景気が加わり、白玉は相当高騰しているということでした。 記憶に新しいのは北京オリンピックです。 あの時、白、青白、青の3色のネフライトがメダルに使用されたことから、人気が高まり、ここ数年で数十倍の値段になりました。 もちろん金メダルには白玉があしらわれています。 それほど、彼らにとって白玉は高貴なものなのです。 しかし和田玉はもう良品がそろいませんので、メダルに使われたのは崑崙玉だといわれています。ここも和田玉からほど近い場所で、昔から良品が採れることで知られています。 ◆王から生まれた玉 今ではどんな石でも玉と言いますが、かつて、玉といえばネフライトのことをさしていました。 そしてその玉という字は、王という字から生まれたのでした。 王という字は、特別な3つのジェードの板を紐でつなげた形から生まれました。 最上段の板は天を、真ん中の板は人を、そして下段は地をあらわしていたのです。これらを総轄する人は、特別な人間であって、それこそが王であるとされました。 そしてその王(天子)が、特別な宝玉を持っているという形になぞらえて、玉という文字になったのです。 |
◆ジェダイトに王座を奪われたネフライト なぜ、後に、ネフライトよりもジェダイトが高価になったのでしょう? あれほど高貴だとうたわれた宝石が、ジェダイトに王座を奪われてしまったのか。 それはジェダイトが色彩鮮やかだったからです。 ビルマ=現在のミャンマーで、色鮮やかなジェダイトが採掘されるようになってから、その人気はジェダイトに偏ってゆきます。 ジェダイトはクロム系の成分によって発色するものがあります。この発色の仕方は、エメラルドやルビー系の発色で、内側から輝くように鮮やかなのです。 しかしネフライトは、鉄系の発色のため、同じ緑でも沈んだ緑に見えます。深緑や白、黒と、色のバリエーションも地味だったため、人気が移行してゆきました。 |