◆軟らかくない軟玉?
ジェダイトは硬玉、ネフライトは軟玉などと呼ばれますが、実際には硬度はほとんど変わりません。
むしろネフライトの方が、粘さ=靭性(じんせい)があり、削ってみるとジェダイトよりも硬いのが分かります。
その秘密は、結晶の出来方にあります。ネフライトは高温で低圧の場所でできるのですが、それが緻密さを生むのです。
結果、ジェダイトの結晶は比較的大きく、ハッキリとブロックのようになっていますが、ネフライトはマーブル状に絡み合っていて、とても緻密なのです。
そのため、細やかな彫刻に耐えられることから、様々な工芸品に加工されました。
私も昔、糸魚川でネフライトをとって削ってみたことがあるのですが、本当に硬く、他の石に比べてなかなか削ることが出来ませんでした。これがネフライトの靭性(じんせい)だと実感したことがあります。
ジェダイトの組織 | ネフライトの組織 |
緻密なため透かしても組織が見えにくい
ネフライトはトレモライトとアクチノライトが混じりあった鉱物なのですが、その偏り方がトレモライトに近いほど、色合いがホワイトになってゆきます。
逆にアクチノライトが多ければ、色合いは緑になり、炭素が入り込めば黒くなります。
ネフライトとジェダイトは、よく、混ざり合って採掘されます。ですから、部分的にジェダイトとネフライトが混じりあっていることもしばしばです。
時に、ジェダイトからネフライトに変化したものも存在し、その見分けは困難です。そしてネフライトに最も似ているのが、サーペンティンです。
サーペンティンも一緒に採れるため、さらに見分けが難しいのです。
◆探し続けた白玉
日本の糸魚川でも、ネフライトとジェダイト、両方を拾うことができるのですが、ネフライトも今ではなかなか採れなくなりました。
だんだん価値が認識されて、拾う人が多くなったからです。
ネフライトの独特の手触りは、どこか人の肌のようにも感じられて、なじみやすく、自分の分身のように感じることがあります。
何度さわっても、また触りたくなる。そんな魅力を持っているのです。
特に珍重されているホワイトネフライトは、私も何年も探し続けていたもので、独特の愛しさを感じます。
当時から最高峰とされただけあって、この白玉だけを集めるコレクターは多く、熱狂的な人はいくつでも集めたがります。
王たちを虜にしたこの高貴な純白の宝石は、派手好みの西洋人には分からない美しさでしょう。
憧れといってもいいかもしれませんが、一度手にすると、なるほどと思います。
不思議なことに、もっと、欲しくなってしまうような欲望にかられるのです。
あさましいと思いつつも、もっと手にしたい、ずっと眺めていたい衝動にかられるのです。
いつだったか、この石を全身にまとって海外に出向いたとき、道行く中国人やお店の人にとても褒められました。
「それはジェード?とても素晴らしいコーディネートね。とても好きだわ」と、何処に行っても言われました。それほど彼らにとってこの石は特殊な感情を沸き起こさせるのです。
夢にまで見た幻のホワイトネフライトを、私はこの手に入れたはずでした。けれどまだ、満足感が薄いようです。
この奥深い魅力に、とり付かれた王族たちの気持ちが、分かるような気がいたします。
もしかすると私もまた、彼らと同じ、得体の知れない魔力にかかっていて、そのせいでさらに欲しくなってしまっているのかもしれません。
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